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2009年6月22日 (月)

200Q

バイク屋をやっていますと、わりに頻繁に聞かれる事ですが。

「それって、自分で出来ますか?」と言う質問。

スピードメーターが動かなくなったバイクを修理したいお客さん。

「メーターを動かしているケーブルが切れていますね、新しいワイヤーに交換すれば直りますよ。」

「・・・それって、自分で出来ますかね?」

概ねそんな流れで聞かれるのですが。実はこの質問がとても困るのです。

出来る人には出来るし、出来ない人には出来ません。そう答えるしか無いからです。

バイクの機種にもよるけれど、一般的にスピードメーターケーブルの交換には、それほど特別な工具を必要としないし、技術的にさほど難しい部分も有りません。

それはあくまで、「僕にとっては」と言う事であり。

「自分で出来ますか?」の人が、どの程度の道具を持っていて、どの程度の技術を持っているかを知らなければ、出来るor出来ないという判断のしようも無い。

で、まあ・・・出来るとも出来ないとも、何とも言えないというか・・・・と、どう説明するべきか言いあぐねていますと。

「そんなに難しいんですか?」と、更に微妙な質問。

いや、簡単ですよ。プロには造作も無い仕事ですけど、それは機械の構造を理解していて、作業の過程で確認すべきポイントを把握していて、なおかつ実践的な整備経験の積み重ねが・・・・・まあその、何だ・・・出来る人には簡単に出来るって事です。

「出来る人には出来るし、出来ない人には出来ないのです。」

と、前置きが長くなりましたが今回のお題は、その売れ行きが大変な話題になっている。

村上春樹の新作長編小説「1Q84」についてです。

発売からたったの一ヶ月で100万部を突破し、今なお書店では品薄の状態が続いてるという話ですから、それこそ色々なタイプの人がこの本を読んだ(あるいは、これから読もうと考えている)事でしょう。

ここまで大々的なあつかいになれば、村上作品のファンは勿論のこと、小説は随分と読んでいるが村上作品は初めてといった人、小説は好きだが村上作品は認めん!と言った人や、あまり本は読まないけれど話のネタに読んでみようという人まで。

個人的には村上作品を長編、短編、エッセイ等まで殆ど読んでいて、著者が毎回取り組んでいるテーマや、大切にしているディティールなども熟知していおり。長い小説を読む事にも慣れているので(どのみち毎日何かしら読んでいるわけで)、2巻で1000ページというボリュームも、すんなり楽しく読むことが出来ました。

読み終わったところで何かしら感想のような事を書いてみようとは思っていた訳ですが。

これだけ多くの色々な読書感をもった人々が読んでいる作品に対して、個人的な感想を書く事が、いったい何かの役に立つのだろうか?今はそんな気がしています。

難しい語句は使われていませんし、文体は独特の親密さを保っており、難解で理解不能という事は無いでしょうが。その長さゆえ、最後まで読み通すにはある程度の読書的体力は必要とするでしょう。
ふとした事から、現実に対して虚構や夢が浸食してくる(村上作品ではお約束の)構成や、暴力的な描写や性的な描写の部分は、受け入れる事が難しい人も居るでしょう。

「どんな小説ですか?」と聞かれても、まあ、その・・・何だ・・・・・

大筋としては、著者がインタビューで語った言葉がしっくりきます。

「10歳で出会って離れ離れになった30歳の男女が、互いを探し求める話にしよう、そんな単純な話をできるだけ長く複雑にしてやろうと。」

確かにそんな感じです、単純で、長くて、複雑。

単純で、長くて、複雑な小説を読みたい人は読めば良いし。
とくにそんな物を求めていない人には、オススメするものでは有りません。

マラソン競技を趣味にしている人が言うには、マラソンは苦しくて退屈な競技では無く、42キロを走るという行為は、エキサイティングでドラマチックな体験なんだと言いますが。
僕もサッカーをするので、日常的にわりと長い距離を走りはしますが。間違ったとしても、いっぺんに42キロを走ろうという気にはなれません。
ドラマチックもなにも、ヘトヘトのボロボロになってお終いでしょうし、ドラマ性を感じながら42キロを走るには、もっとランニングに特化した長期間のトレーニングが必要なのでしょう。
そして、何よりもそれは、僕の求める種類の興奮とは違うものだと思うからです。

長くて、単純で、複雑な「1Q84」という小説を、注意深く読み通した体験は、僕にとってエキサイティングでドラマチックではありましたから。まずは、それだけのトレーニングが出来ていた自分を評価したい(小さく、静かに)と思います。

今後も「1Q84」には多くの論評がなされて、それぞれの主観から議論が交わされる事でしょうが、そっち方面には今の所、あまり興味がありません。

「1Q84」の中で、主人公の父親が主人公に対して言った言葉なのですが、この部分が僕は気に入っています。

「説明しなくてはそれがわからんというは、つまり、どれだけ説明したところでわからんということだ」

なるほど、そうかも知れない。

村上春樹の作品は多くの言語に翻訳され、世界中で多くの読者に読まれています。
恐らく現役の作家の中では、最も広く世界中で読まれている作家でしょう。
とは言え、誰にでも楽しく読める小説だとは言えません。
同じく世界中で読まれている「ハリーポッター」といった作品とは、まったく違う性質の言語作品なのですから。

単純で、長くて、複雑。

1Q84 BOOK 1 1Q84 BOOK 1

著者:村上春樹
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1Q84 BOOK 2 1Q84 BOOK 2

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